耳鼻咽喉科の先生にボコされた話
朝起きたら自分を中心にゆっくりと地球が回ってて。
あーこれはとうとう時代が来たかなって。
36歳にしてとうとう何かしらのゾーンに入っちゃったかなって思ったら、ただただ酷い目眩がおきてただけだったっていう。
目眩ゾーン入っちゃってた。
自分を中心にどうのこうのっていうか、自分の中だけで完結してた。
いや立とうと思っても視界に入る部屋の景色がぐにゃ~って曲りくねる感覚で、加えて怒涛の吐き気でまた倒れ込んじゃって。
それでもトイレ行きたかったから。
僕って漏らすのあんま好きじゃないし、回ってる景色におしっこ加えたくもないし。
おしっこ回したくない派の人だから。
よろめきながらもトイレには行けて、でも気持ち悪いからまた横になるわけなんだけど、どっちかっていうと立っている方がまだマシなんですよね。
これなんだろうって思ったんだけど、知り合いが三半規管にある耳石という石がズレて起きる目眩で倒れた事があって、その可能性を疑って。
これは耳鼻咽喉科だなって事で診察を受けました。
その診察なんだけど、まず真っ暗なゴーグルみたいのを装着させられて、歯医者のリクライニングチェア的なものに寝転がるんですね。
そんで先生が背中を支えて少し起こしてくれるんだけど、その直後、バーーンって叩きつけるんだよね。
こっち真っ暗で何も見えないんだけど、先生にボコされてるのは分かって。
あ、ボコされてるって思って。
叩きつけられたあとは、首だけ持ち上げられて右側にグイイって思いっきり向けられて。
強制右向き。
力任せに右向かされてる。
真っ暗で何も見えないのにめっちゃ右向いてる。
何のプレイなんですかこれは。
ここで目眩も頂点ですよ。
反撃しようにも自分がどこを向いているのか、先生がどこにいるのかさっぱり分からなくて、完全にやられっぱなし。
反撃の機会を与えない怒涛の攻撃で、医師でありながらこの畳み掛けは文武両道だなって。
強制右向き攻撃の後は当然のように強制左向き攻撃ね。
視界が真っ暗なのに酷い目眩状態、この極限状態であるにも関わらず、右があったから左もあるだろうなーとは思ってて。
案の定ですよ。
やっぱ左もある。
先見の明がある。
ゴーグルもぎ取ってそのゴーグルで先生かち割ってやろうかと思うんだけど、このゴーグルがまた結構がっちり固定されてんのね。
これ固定に定評のあるゴーグルで、先生サイドもゴーグルでかち割られないように手を打ってあるって事よ。
高学歴の先読みに関心したよね。
医師になるだけの事はある。
国家が認めたんだろうけど、僕も改めて医師として認めるわ。
さて、酷い目眩の中起こされて、ゴーグルも外されてPC画面に映し出されたのは、ゴーグル内部に設置されたカメラの映像。
僕の両目が赤外線カメラでばっちり映し出されている。
先生に叩きつけられた瞬間の自分の目は小刻みに動き回ってて、「これが目眩になっているって事なんですよー」って説明を受ける。
いやもうこっちとしては、この目眩は自分の元々の症状なのか、先生にボコされてなってる症状なのか分かんないんだけども。
まぁ取り敢えず診断結果が出まして。
良性発作性頭位めまい症。
やはり知り合いに起きたものと同じ病気。
耳石というカルシウムの粒が、本来あるべき所から半規管の中に落ちて起きるもの。
良性って言うから良い事なのかと思ったけど良くはないらしい。
老化現象のひとつで、歳を取れば取るほど起きやすいのだとか。
一応薬で目眩を抑える対症療法はあるけど、根本治療としては寝返り運動という独特の体操によって改善させていく方法しかないと。
「その耳石を元に戻す運動ですか?」って聞いたら、元に戻る事はなくて、粉々に溶かして消し去ってしまう為に代謝を促すものなんだとか。
なんか勿体ないなって思ったけどちょっとハッとした。
恋人と別れた時、男性は未練たらしくて、女性はさっさと忘れて次に向かう事が多いと言うけれど、ご多分に漏れず未練たらしい事を言ってしまった。
元カレは粉々に消し去るべき。
元カレっていうか、元カルだけど。
で、この良性発作性頭位めまい症はどうやったら防げるのって事なんですよ。
僕は普段全くお酒は飲まないんだけど、目眩の起きる前日にどうしても断れない飲み会が一日に2回入って。
仕方ないから付き合いで少し飲んだんだけど、お酒に弱いからひょっとしてこれ関係するんじゃないかなって思って先生に聞いたんですよ。
「関係ないね」
柴田恭兵頂きました。
でも他にも心当たりがあって。
仕事で僕は車の中で仮眠を取ることが多くて。
仮眠っていうか、家よりも車で寝る事の方が多いくらいの勢いで、そういう寝返りすらうてない環境で寝続けているからなっちゃったんですかね?って先生に聞いてみたんですよ。
「関係ないね」
関係あれよ。
なんだよこの恭兵。
こっちの仮説すぐ否定するじゃん。
否定恭兵かよ。
そうやって否定することに快感を覚える可哀想な人になり続けろ。
雨の日も、晴れの日もな!