液体パパ

3人子育て中の個人タクシードライバーがわりと変な記事を公開します。



酔ったお客さんが路上で突っ伏して動かなくなった話

いやー忘年会シーズンですよね。

僕はタクシーの仕事をしているんですが、お客さんとしてはトラブルの少ない爺さん婆さんがとにかく大好きで。

普段は繁華街を避けて病院にしか行かない老人ばっかりを乗せる営業をしているんですけど、このシーズンだけはどうしてもアレを避けらんない。

酔っぱらい。

夜間は突然道端にいるから、黒いスーツだと地面から急に召喚されたように見えるんだよね。

実際召喚獣みたいな動きになってる酔っぱらいもいるしね。

いやまぁ多くの酔っぱらいは愉快になっててむしろ楽しいくらいなんですよ。
そういうのは良いのよ。
でも一部がね。
一部の召喚獣がね。

この間乗ってきた50過ぎくらいのおじさんもね、思いっきり召喚獣やってて。
動きが獣。
足元に魔法陣が見えた。

まず乗った瞬間言うもん。

「あー…吐きそう…多分2、3回停まってもらうわ……」


でた!


行き先の住所ははっきり言えたからナビ使って向かうんだけど、もう乗った瞬間どっかでリバースする事が確定しているやつ。
打った瞬間それとわかる当たりのやつ。

ゴジラみたいな。
ゴジラ出てきたら絶対に一回は口から吐くもんね。

この仕事は車内でやられたらその時点でお終い。
その時点でサライが流れるから。

安西先生が「これは試合終了です!!」って高らかに叫んじゃう程の試合終了っぷりになっちゃうから。


だからこまめに言いましたよ。
ヤバくなったらすぐ言って下さいねーって。

けど何ですかね?
こっちが聞くと「まだイケる」って返されるんですよ。

でもその10秒後くらいに「ヤバい!停めて!」って。

ドアを開けると飛び出していってどっかでリバースして戻ってくる。

「あー吐きそう…」

戻ってきても言う。
リバース済みであろうに。

シンゴジラでさえチャージが必要だったと思うんだけど、この人は無限に出せるのか?

これと同じ様な事を数回繰り返した。
この人を是非発電に利用したい。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫!行って!」


「やっぱ停めて!」

夜中とは言え東京の道路は安全に止まれる箇所が限られているから、出来ればこっちのペースで停車したいの。

この一回大丈夫を挟むのすごい嫌。
大丈夫挟むの禁止にしたい。
大丈夫を挟むと向こうに電流が流れるようにしたい。


そんでまぁその後ですよ。

5回目の停車時のリバースの時。

車内から少し離れた暗がりにいるお客さんの様子をよーく見ると、どうも地面に突っ伏しているように見えるんだよね。

よく見える訳ではないから、最初は何かたまたまそのように見えるだけかなーって。
少し離れるとたまたま薄っぺらく見える人なのかなーって。

けどいくらなんでも薄いって思って。
人影が余りにも薄っぺらいって思って。

動かなくなって多分3分くらいは経ってた。
ウルトラマンなら突っ伏している間に全部終わらせて帰っちゃうよ。

その日の気温は5度以下。


うわー死んだーって思って。

さすがに死んだーって思って。

これは119番と110番どっちがいいの?って本気で思って。

いつでも使えるようにスマホ片手にお客さんの方に行って「大丈夫ですか?」って声をかけた。

すかさず「大丈夫だ!」って返事があったね。


タフかよ

絶対に大丈夫じゃねぇのに。
東芝くらい大丈夫じゃねぇのに。


結局またフラフラしながら車に戻ってきてどうにか目的地の自宅に到着。

支払いを終わらせた頃に奥さんが出てきて、「運転手さん、ご迷惑お掛けしたみたいでほんとすいませんね」つってお客さん引きずり降ろしてた。