【日常】自転車のチューブに込めた湘南乃風
家の自転車用の空気入れがぶっ壊れまして。
せっせと空気を入れるとズッポーーンって、先端の洗濯挟みみたいな部分を置いて管が逆噴射で吹っ飛ぶようになりまして。
それでも最初のうちはよかったんですよ。
タイヤチューブ内の空気が充満して圧力が高まった時にだけ射出されて、何ならオートストッパー機能になってましたから。
それが段々ゆるゆるになっちゃって。
コンビニ強盗する時の凶器が先割れスプーンってくらいゆるくなっちゃって。
せめてフォークが欲しかった。
フォークでも結構な妥協なんだけど、でもまだフォークの方がよかった。
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先割れスプーンで店員脅してもさ、出てくるのせいぜいメロンとかスイカだから。
ほじくる果実しか出てこないから。
「メロンは口の中がピリピリ痛くなっちゃう体質だから、主にスイカを出せ!早くしろ!」
って先割れスプーンで強盗に入る人の体質とかどうでも良くてですね、いよいよこれ空気入れとしての役割が果たせなくなってきたんです。
しまいにゃタイヤぶかぶかですよ。
所が最近は空前の自転車ブームって事もあって、街にはチェーンの自転車屋さんが増えたんですよね。
ありがたい事にそういう新しい自転車屋さんは大抵空気入れを無料で貸してくれるんです。
しかもね、駅前に出来た某自転車屋は手動でシュコシュコやるアレじゃなくて、油圧だか空気圧だか電気式だか、オートで注入するタイプなんですよ。
別に空気入れ買わなくてもこういう所で入れりゃいいんじゃねーの?
家から下り坂をざーっと下れば自転車屋。
ぶかぶかのタイヤでもどうにか行ける。
でまぁこの間行ったら定休日だったっていう。
空気入れも律儀に店内にしまっちゃうのね。 片付け上手かよ。 近藤麻理恵かよ。
こっちのときめきはたった今潰えたよ。
さすがに定休日まで出しておくほどお人好しじゃないみたい。
あの下ってきた坂をこのクソぶかぶかタイヤで登らないといけないと考えるとちょっとイラッと来まして。
ちょっと気分は先割れスプーンの強盗みたいなゆるい状態じゃなくなっちゃった。
カニほじくるやつくらいの殺傷能力は欲しくなっちゃった。
「カニを出せ!」
「え?金?」
「金じゃない!カニだ!」
「カニですか?」
「カニだ!そのバッグに入るだけ詰めろ!」
「缶詰か…あとはカニ風かまぼこくらいしか無いんですけど」
「ほじくるカニは?」
「ほじくるカニですか…?う~ん…カニ風かまぼこの中身をそれでほじくるっていうのは?」
「外の赤い部分を残す食べ方か…。それも悪くないかもしれぬ」
いや何だこの話。 ほじくる強盗の話はもういいんですよ。 "悪くないかもしれぬ"じゃないんですよ。
とにかくどうにか坂を登って帰宅しました。
そんで後日。 今度はインターネットで定休日を検索して、それを避けて行く作戦。
最初からそうすれば良かったんだ。 ネットにはもちろん定休日の情報があった。
それと、僕の最寄り駅のその自転車屋さんの口コミも同時に書かれてて、接客態度は悪いってなってた。
まぁ空気入れを使うだけだから関係ないよね。
空気入れだけ利用して去ろうとしたら毒を塗りたくったスパナ投げてくるとか無いよね。
接客悪いっていうか只のヤバい奴だからねそれ。
再び僕は下り坂を転がして自転車屋さんへ到着。
そして外に置かれている空気入れで入れようとした所、何故だか入らない。
あれ?
何回やっても入らない。 機械の故障かと思って後輪タイヤで試したらそっちは普通に入ったわけ。
何かが詰まってるのかと思って中のピンを抜いたらブシューって空気も完全に抜けた。
うっわ。 なんか知ってるのと違う。 この時点じゃ空気はまだ抜けないと思ってた。
ちょっと抜けるけど多少は持ちこたえるパターンかと思ってた。
大腸は爆発するけど小腸は無事みたいに、どうにか持ちこたえるパターンかと思ってたのに。
これは前輪なんだけど、前に別の自転車屋でタイヤ交換をお願いした事があって、前後で違うタイプのタイヤが装着されてる状態なのね。
このタイプはよくある普通のじゃなくて、虫ゴムとかが使われてない初めて見るタイプで。
もしかしたらこのオートの空気入れじゃ入らないやつなのかもしれない。
そうなるともう店員に様子を見てもらうしかない。
壊れる前の家の空気入れだったら普通に入ってた訳で、このオート空気入れがそれに対応していないだけって可能性もある。
しかしここで思い出されるのがあのネットの書き込み。
無料で貸してくれた空気入れで空気を入れようとしたら入らなくて、そればかりか残りの空気も完全に抜けちゃって、どうしてくれます?
言えない。
きっと全力で塩対応される。
きっと毒を混ぜたクレ556を噴射される。
店内の少し厳つい、湘南乃風みたいな二人組はせっせと作業してる。
うん。 本当はもっと湘南乃風感があったんですけど、僕の画力で出せる湘南はこれが限界でした。
戸塚くらいまでしか行けなかったわ。
でもこのままじゃどうしようもない。 何なら故障なのかもしれない。
故障だこれは。
空気を入れるのに手間取って店員の手を煩わせる訳ではないのだ。
素人には分からないレベルの故障なのだ。
満を持して店内へ。
「あの、すいません」
「あい?」
「あの、何か空気が入らなくなってしまってですね…故障かなんかじゃないかって思いま…」
「ああ、見てたよ。何やってんだろって思ってた」
見てたのかよ。 この湘南ボーイ僕のテンパりっぷりを見てたのかよ。
作業を中断した湘南は店内にあったオートの空気入れで注入し始めた。
そしたら普通に入りやがんの。
何それ。
店内の空気入れはパワーが違うんじゃないの?
風が、風がきっと違うんだ。 湘南乃風を注入出来るんだ。
「これでいいんじゃないの?」
湘南乃風が湘南乃風を注入し終わった。
すげーあっさり入った。
「あ、え?あれー?いやーすごいっすね!」
「すごくはねーよ」
ぶっきらぼうにそう言うとまた作業に戻る風の使い手。
礼を言ってそそくさと脱出する僕。
やっぱし空気入れは買おう。 ここ以外の店で。